英雄はたくさんいる

英雄というのは何処にでもいるのです。
目立たなくて輝かしくもなくて凱旋パレードなんかもない
ずっとずっと地味で身近なところに。

やぶからぼうに英雄のことなんか言いだしているのは
今読んでいる本にそういうことについて出てきたので。

『ブラックアウト』コニー・ウィリス著 早川書房

何年も前に読んだのですが、内容をすっかり忘れてしまっていて
続きを読むためにおさらい読みしているところです。

SF小説なのですが、
未来のオックスフォード大学には史学部というものがあって
タイムトラベルで過去へ行ってその時代の事を調査研究する
というようなことをやっているのです。
小説としてとても面白いシリーズです。
お読みになるときは『ドゥームズデイ・ブック』から始めるのをおすすめします。

第二次大戦下のイギリスへ調査へ出かける学生が何人かいて
ある男子学生が英雄を調査するために
歴史上の英雄が活躍した場所へ行こうとするのですが
なかなか行けません。
別の場所で防空壕に市民たちと共に避難して
恐怖の時間を過ごしている女子学生が
目の前で起きていることを見ていて思うのです。

英雄を観察したいのならここに来ればいい。
爆撃が続く中を自分の役目を果たすために出てゆく女性たち、
誰が来たのか敵か味方か判らないのに防空壕の扉を開けて
相手を中に入れる牧師、
毎夜爆撃の恐怖に耐えながら防空壕で過ごす市民。
これらのことにどれ程の勇気がいることか。
華々しい活躍をしている軍人ではなく
この人たちこそが英雄ではないか、と。

これを現実の世界に置き換えて考えてしまいました。
目覚しい活躍をしたり世界に名をはせたりしている人ばかりが英雄ではない。
自分の日常を、投げ出すことなく根気よく、
誠意を持って生きている普通の人こそは英雄なのでは。と。

未来に希望を持つのがとても難しいこの今の世の中で
絶望に陥らず正気を保って毎日を生き続けるというのは
とても、とても勇気のいることです。

日常をこつこつと生きる地味で身近な人たち。
この世界は英雄でいっぱいです。