きものとからだ

豊かで楽しい着物ライフに役立ちそうな本をご紹介します。

仕事でもなくお茶などのお稽古事のためでもなく、

ただ着たくてきものを着ている、という方が

きものを着始める動機やきっかけとは何なのでしょう。

人それぞれに理由があると思います。

私の場合は、京都市で毎年春に行われている

「伝統産業の日」というイベントがきっかけでした。

きものを着ていると、市内の色々な施設を無料で利用でき、

市バス地下鉄もただになる、という美味しい企画。

初めて参加した時には仕舞いこんであったきものを無理矢理着て参加しました。

そしてきもので街を歩く快感に目覚めてしまい今日に至っています。

『きものとからだ』

この本の著者、三砂ちづるさんがきものを着始めた動機は凄いです。

もう、靴を履きたくない!というものなのです。

あの足全体を締め付ける靴、そしてストッキング、あの不快感をもう我慢したくない!

という強い思い。

そしてブラやガードルなどの体を締め付ける西洋下着もまっぴらごめん、と。

それでも仕事に(大学教授です)行くのに妙な格好で行くわけにはいかないのですし、

そうなるともう選択肢はきものしかない。

著者には、運の良い事に、きものについて教えてくれる友人がいました。

その人に「きものを着る!」という決心を伝えると全部揃えてくれて、

着付けも教えてくれて、次の日からきもので仕事に行くようになったという事なのです。

きものを着るのに必要なのは、「着る!」という決心と、

教えてくれる人を持つこと、これだけだと著者は書いています。

なんというシンプルさ。でもこれこそが真実なのでしょう。

この”きもの経歴”をもつ著者がつづるきものに関する様々な事は、

きものを着始めた人には勇気を与えてくれます。

雪の中に雨下駄で踏み込み大惨事(?)に至るエピソードや、

海外出張に大島紬を着ていくくだりなどなど。

既に着物生活に入って長年暮らしている人からは

なかなか聞かせてもらえないようなお話です。

そして、母子保健を専門とする研究者である著者は、

女性がきものを身につけることで守られる体のありようや

文化のありようについても判りやすく楽しく述べていて、

きものというものの奥深さ、理にかなった衣服なのだと納得させてくれます。

私はこの本を読んでからますます、きものを着るのが楽しく誇らしくなりました。

きものを着る事に自信と喜びと安心をくれる本です。

『きものとからだ』三砂ちづる著 木星叢書 バジリコ刊

※上記の本は長らく絶版になっていましたが、文庫でタイトルを変えて発行されました。

きものは、からだにとてもいい 講談社+α文庫